「どこに座るか」を間違えないこと。それは、ビジネスの基本だ。ただ、席次を正しく選べても、座る動作や、上着・コート・鞄の置き方が雑では、印象は半分しか伝わらない。席次の基本と、座るときのスーツの所作を、あわせて整理していこう。
CHAPTER 1|上座・下座の大原則
席次には、一貫した考え方がある。
- 出入口から遠い席が上座、近い席が下座
- 景色のよい席、落ち着ける席が上座
- 目上の人、お客様が上座、目下の人、迎える側が下座
覚えておきたいのは、**「入口から一番遠い席が、最も格が高い」**という一点だ。ここから、すべての場面が派生する。
CHAPTER 2|場面別 席次の基本
| 場面 | 上座 | 下座 |
|---|---|---|
| 会議室 | 入口から最も遠い席(議長席) | 入口に最も近い席 |
| 応接室 | 入口から遠い長椅子(ソファ) | 入口に近い一人掛け |
| エレベーター | 操作盤の奥側 | 操作盤の前(操作する人) |
| タクシー | 運転手の後ろの席 | 助手席 |
| 自家用車 | 運転手が上司の場合は助手席 | 運転手の後ろは、状況による |
| 列車 | 進行方向の窓側 | 通路側、進行方向と逆 |
| 和室 | 床の間の前 | 入口に近い席 |
| 飲食店 | 入口から遠い奥の席、景色のよい席 | 入口に近い席 |
タクシーは、運転手の後ろが最上位、助手席が最下位と覚えておくと分かりやすい。ただし、自家用車で上司が運転する場合は、助手席が上座になる。例外があるので、状況に応じて判断したい。
CHAPTER 3|席に着く前に、整えること
席次を意識するのと同じくらい大事なのが、座る前の準備だ。
- 席を勧められるまで、立って待つ(お客様の場合は、案内されたあとに)
- 上座を勧められたら、一度は遠慮し、重ねて勧められたら、感謝して座る
- ジャケットのボタンは、座る直前に外す
- 荷物は、自分の足元か、椅子の横に置く
上座を固辞しすぎないことも、気遣いのうちだ。何度も断ると、勧めた側が困る。一度は遠慮し、受けるときは、にこやかに。これが、ちょうどよい。
CHAPTER 4|座る瞬間の、スーツの所作
座るとき
- ジャケットのボタンを外す
- 上着の裾を、軽く手で整え、お尻の下に敷かない
- 背筋を伸ばし、浅めに腰掛ける
座っている間
- ジャケットは、着たままが基本(勧められるまで、脱がない)
- 背もたれには、深く寄りかからない
- 脚は、組まずに、そろえるか、軽く開く
立つとき
- 立つ前に、姿勢を整える
- 立ち上がり際に、ボタンを留める
- 上着の裾を、軽く整える
座る一瞬、立つ一瞬。ここがもたつく人は、驚くほど多い。ボタンの扱いを、流れで覚えておくと、動作が自然になる。
CHAPTER 5|コート・鞄・上着の置き場所
北海道の冬は、コートの置き場所が、席次と並んで大事になる。
コート
- 訪問先では、建物に入る前に脱ぎ、雪を払う
- 脱いだコートは、汚れた面を内側にして畳み、腕に掛ける
- 応接室では、コート掛けや、椅子の背もたれではなく、案内された場所、または自分の足元や鞄の横に置く
鞄
- 床に直接置くのが基本だが、椅子や机の上には置かない
- 雪や水で濡れた鞄は、拭いてから室内に持ち込む
上着
- 着たままが、フォーマルな場の基本
- 暑いときは、相手の「お脱ぎください」の一言を待ってから脱ぐ
- 脱いだ上着は、椅子の背もたれに掛け、シワにならないように整える
「お脱ぎください」と言われてから脱ぐ。自分から脱がない。この順番を守るだけで、礼を欠かずに済む。
CHAPTER 6|意外とやりがちな、席次の失敗
- 案内される前に、自分で席を決めて座る
- 上座を勧められて、何度も固辞しすぎる
- 座ったまま、ボタンを留めっぱなしにしている
- 濡れたコートや、雪の付いた鞄を、そのまま室内に持ち込む
- 鞄を、机や椅子の上に置く
- 会食で、上司より先に箸をつけたり、席を立ったりする
席次は、知識のあるなしで、はっきり差が出る分野だ。逆に言えば、知っているだけで、周りと差がつく。
EDITOR’S EYE|編集後記
席次は、**「相手を、一番よい席に迎える」**という、シンプルな気持ちから生まれたルールだ。難しい決まりごとに見えて、根っこにあるのは、相手への敬意と、場への配慮だと思う。
そして、座る動作そのものにも、品格は宿る。ボタンを外し、裾を整え、背筋を伸ばして腰掛ける。この一連の動作が美しい人は、スーツを着慣れていて、場慣れしている印象を与える。体に合ったスーツは、座った姿勢まで、きれいに見せてくれる。
オーダースーツ Roi Renard(ロイレナード)では、座ったときの着心地や、シワの出にくさなど、実際の所作を踏まえた仕立てのご相談も承っています。気になることがあれば、お気軽にお問い合わせください。
