初対面の場で、最初に交わすのが名刺だ。時間にして数十秒。だが、この短い時間に、ボタンの扱い、姿勢、手の動き、名刺入れの出し方と、スーツにまつわる所作が一気に出る。相手は、名刺の肩書きと同じくらい、あなたの動きを見ている。名刺交換の基本を、スーツの視点から整理していこう。
CHAPTER 1|名刺交換は、立ち上がる前から始まっている
名刺交換の準備は、相手の前に立つ前に済ませておく。
- ジャケットのボタンを留める(2つボタンなら上のみ)
- 名刺入れは、内ポケットか胸ポケットに入れておく
- 名刺は、すぐ取り出せる位置に、向きを揃えてセットしておく
- 雪国では、手袋を外し、手の水気を拭いておく
ポケットの中で、名刺入れを探してもたつく姿は、思いのほか目立つ。出す動作まで、あらかじめ設計しておく。それが、慌てない人の共通点だ。
CHAPTER 2|基本の流れ 渡す、受け取る
名刺交換の基本は、次の流れだ。
- 立ち上がり、デスクや机の前に出る(座ったまま交換しない)
- 相手の正面に立ち、ジャケットのボタンを留める
- 訪問した側、または目下の側から先に差し出す
- 自分の名刺を、相手が読める向きにして、両手で持つ
- 会社名と氏名を、はっきり名乗りながら渡す
- 相手の名刺は、両手で受け取り、「頂戴いたします」と添える
- 受け取ったら、名前と読み方を確認する
ここで大事なのは、相手の名刺の、名前や会社名、ロゴの部分を、指で隠さないことだ。端を、そっと持つ。

CHAPTER 3|「同時交換」のときの手の動き
実際の場では、お互いが同時に差し出す場面も多い。そのときの基本は、こうだ。
- 自分の名刺は、右手で差し出す
- 相手の名刺は、左手の上で受け取る
- 受け取ったら、すぐに右手を添え、両手で持つ
片手での交換は、略式の印象を与える。同時交換でも、最終的に両手で持つところまで、丁寧に行いたい。
CHAPTER 4|受け取ったあとの扱い ここで差がつく
名刺は、相手そのものとして扱う。ここに、配慮が出る。
してはいけないこと
- 受け取った名刺を、その場でポケットにしまいっぱなしにする
- パンツの後ろポケットに入れる
- 名刺の上に、メモを書く(相手の前では)
- 名刺を、折る、曲げる、指でいじる
望ましい扱い
- 商談中は、名刺入れの上に載せて、机の上に置く
- 複数人の場合は、相手の席の並びに合わせて、名刺を並べる
- 面談が終わったら、名刺入れに丁寧にしまう
名刺入れに、その場でしまうのは、面談の終わりを告げるサインでもある。途中でしまうと、会話を切り上げる印象になりかねない。
CHAPTER 5|スーツ側の準備 名刺入れとポケット
名刺交換を美しく見せるのは、道具の選び方でもある。
| 項目 | 避けたい例 | 望ましい例 |
|---|---|---|
| 名刺入れ | 分厚く、膨らんだもの | 薄型で、革の状態が良いもの |
| 収納場所 | パンツのポケット | ジャケットの内ポケット |
| 名刺の状態 | 角が折れ、汚れている | きれいな状態を、常に切らさない |
| 向き | 向きがバラバラ | 向きと表裏を揃える |
ジャケットの内ポケットに、名刺入れだけでなく、財布やスマホまで入れると、胸のあたりが膨らむ。シルエットも崩れ、取り出す動きももたつく。名刺入れは、専用の定位置に。それだけで、所作が格段に美しくなる。
CHAPTER 6|北海道ならではの注意点
雪国での名刺交換には、もう一つ意識したいことがある。
- 手袋は、相手の前に立つ前に外す。手袋をしたまま名刺は受け取らない
- コートは、建物に入る前に脱ぎ、雪を払う
- 外気に触れた名刺入れは、湿気や結露で、名刺が湿ることがある。内ポケットに入れておくことで、体温で守られる
- 雪で濡れた手では、名刺が汚れる。ハンカチやタオルで、手を拭いてから交換する
冬の移動で、手が冷えて、思うように動かない。そんな場面でも、慌てないための準備が、礼儀のうちだ。
CHAPTER 7|よくある、もったいない所作
- 座ったまま、名刺を渡す
- ジャケットのボタンを、留めずに交換する
- 名刺入れを、探しながら差し出す
- 片手で、名刺を差し出す
- 受け取った名刺を、すぐに見ずに、しまってしまう
- 名刺の名前や、読み方を、確認しない
どれも、知らなければ気づけないことばかりだ。ほんの少しの意識で、印象は大きく変わる。
EDITOR’S EYE|編集後記
名刺交換は、相手への敬意を、手の動きで見せる時間だと思う。ボタンを留め、立ち上がり、両手で渡す。その一つひとつが、言葉にならない挨拶になる。
そして、所作は服が支えてくれる。ジャケットの肩のラインや、袖丈、ポケットの位置。体に合ったスーツは、動きを自然に、美しく見せてくれる。名刺を差し出す腕の動き、屈んだときの背中のライン。そこまで含めて、スーツは、あなたの「第一印象」をつくる。
オーダースーツ Roi Renard(ロイレナード)では、腕の動きやすさや、内ポケットの位置・仕様など、所作に合わせた仕立てのご相談も承っています。気になることがあれば、お気軽にお問い合わせください。
