スーツ姿で、最も視線が集まるのは首元だ。そのなかで、ネクタイの結び目は、顔のすぐ下で常に目に入る。結び方、結び目の大きさ、そしてディンプル(えくぼ)。この3つが整っているだけで、スーツ姿は一段と洗練される。基本を押さえていこう。
CHAPTER 1|結び方は「見せ方」を決める
ネクタイの結び方は、数多くある。ただ、ビジネスで押さえておきたいのは、次の4つだ。
| 結び方 | 結び目の特徴 | 向いている襟 | 向いている場面 |
|---|---|---|---|
| プレーンノット | 小さめ、すっきり | レギュラーカラー | ビジネス全般、厚手・ウールタイ |
| セミウィンザーノット | 逆三角形、バランス良 | レギュラー〜ワイドスプレッド | ほぼすべての場面 |
| ウィンザーノット | 大きく、正三角形 | ワイドスプレッドカラー | フォーマル、式典 |
| ダブルノット | プレーンノット+ひと巻き | レギュラーカラー | 細身・薄手のタイにボリュームを出したいとき |
選ぶときの目安は、襟の開き(カラーの形)と、タイの厚みだ。襟の開きが広いほど大きな結び目、狭いほど小さな結び目が、バランスよく収まる。迷ったら、セミウィンザーを選べば、まず間違いない。

CHAPTER 2|基本の「プレーンノット」の結び方
最も基本の結び方が、プレーンノット(別名:フォーインハンド)だ。手順が少なく、慣れれば10秒で結べる。
- シャツの襟を立て、大剣(太い側)を右、小剣(細い側)を左にして首に掛ける。大剣のほうが長くなるようにする
- 大剣を、小剣の前で交差させる
- 大剣を、小剣の後ろに回して、再び前に出す
- 大剣を、小剣の前を横に一周させる
- **首元の内側(結び目の裏)**から、大剣を上に通し、前面の輪をくぐらせる
- 結び目を軽く持ち、大剣を下に引いて締める。位置を整えて、襟を戻す

大剣の長さは、結び終えたときに、ベルトのバックルにかかる程度が目安だ。結び始めの位置で、この長さを調整しておきたい。小剣は、大剣の裏側にある「ループ」に通すと、ぶらぶら動かず、きれいに収まる。
CHAPTER 3|ディンプルとは何か
ディンプルとは、結び目の下にできるくぼみ(えくぼ)のことだ。このくぼみがあるだけで、結び目に陰影と立体感が生まれ、ネクタイがこなれた、品のある表情に変わる。
ディンプルの効果
- 結び目に立体感が出て、首元が引き締まる
- 平面的になりがちなタイに、奥行きが生まれる
- 手をかけた印象が、きちんとした着こなしにつながる
ただし、絶対に必要なものではない。場面によっては、ないほうがよいこともある(CHAPTER 6で詳しく触れる)。
CHAPTER 4|ディンプルの作り方
ディンプルは、結び目を締める最後の工程で作る。ポイントは、締め切る前に、くぼみを作ることだ。
- 結び目を作り、まだ締め切らずに、少し緩めた状態にする
- 結び目の真下に、人差し指(または親指と中指)を軽く当て、くぼみを作る
- 指でくぼみを押さえたまま、大剣をゆっくり下に引き、結び目を締める
- 結び目の左右を、親指と人差し指で軽くつまみ、アーチ状のくぼみを整える
- 襟を戻し、結び目を襟元までしっかり上げる

きれいに作るコツ
- 締めすぎない。強く引くと、くぼみが潰れる
- 結び目の左右を、軽くつまんで形を整えると、自然な陰影になる
- 生地が柔らかめのタイほど作りやすい。厚手や硬い生地は、くぼみが出にくい
くぼみが、結び目の中央に、まっすぐできているかを、鏡で確認したい。左右にずれると、かえってだらしなく見える。
CHAPTER 5|ディンプルを「作る場面」と「作らない場面」
ディンプルは、場面によって使い分けたい。
| 場面 | ディンプル | 理由 |
|---|---|---|
| 通常のビジネス | 作る | きちんと感と、こなれ感が出る |
| 商談・プレゼン | 作る | 好印象につながりやすい |
| 面接 | 控えめに作る、またはなし | 個性より、清潔感と誠実さを優先 |
| 慶事(結婚式など) | 作る | 華やかさを添える |
| 弔事(葬儀など) | 作らない | 装飾を避け、控えめにするのが一般的 |
弔事では、ディンプルを作らないのが、一般的な慣習とされる。黒無地のネクタイを、シンプルに結ぶことを意識したい。
CHAPTER 6|北海道の冬ならではの注意点
雪国では、ネクタイの扱いにも、冬ならではの配慮がある。
- コートやマフラーの下で、結び目が崩れやすい。建物に入る前に、整え直す
- 厚手のウールタイは、結び目が大きくなりやすい。プレーンノットで、小さめに仕上げるとバランスがよい
- 屋外の湿気や雪が、タイに付くことがある。濡れたまま放置せず、乾かしてから保管する
- ニットタイは、ディンプルが作りにくい。素材を活かして、ラフに、小さく結ぶのが似合う
冬は、タイの素材にも、季節感を出したい。ウール、ツイード、ニットなど、温かみのある素材が、スーツの生地と呼応して、季節らしい装いになる。
CHAPTER 7|意外とやりがちな、もったいない結び方
- 大剣が短すぎる、または長すぎる(ベルトのバックルが基準)
- 小剣が、大剣より長く出てしまう
- 結び目が、襟元まで上がっていない(緩んでいる)
- 結び目が、襟に対して大きすぎる、小さすぎる
- ディンプルが、左右にずれている
- 結び目に、シワやねじれが残っている
- ほどくときに、結び目を締めたまま、頭から抜く
最後の項目は、ネクタイの寿命を縮める典型的な扱いだ。ほどくときは、結んだ手順と逆の順番で、丁寧にほどく。

CHAPTER 8|ほどいた後の、ネクタイの手入れ
ネクタイは、結んでいる間にシワと癖がつく。ほどいたあとの扱いが、寿命を決める。
- 結び目を、逆の手順でほどく(引っ張って抜かない)
- ネクタイを、平らに伸ばして、シワを戻す
- ネクタイ掛けに吊るす、またはゆるく巻いて、引き出しに保管する
- 連日使わず、数本をローテーションする
結んだまま放置しない。これだけで、ネクタイは見違えるほど長持ちする。
EDITOR’S EYE|編集後記
ネクタイは、スーツのなかで最も、自由度の高いアイテムだ。色、柄、素材、そして結び方。一本のタイに、無限の表情が宿る。
そして、その表情を決めるのは、結び目と、ディンプルという、ほんの数センチの世界だ。この数センチを整えるために、鏡の前で、数秒を使う。その習慣が、装いへの意識を変えていく。
結び目は、その日の自分への、小さな儀式だと思う。丁寧に結び、丁寧に整える。それだけで、一日の始まりが、少しだけ背筋の伸びたものになる。
オーダースーツ Roi Renard(ロイレナード)では、襟の形(カラー)や、ラペルの幅に合わせたネクタイの選び方など、トータルのご相談も承っています。気になることがあれば、お気軽にお問い合わせください。
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