スーツは着たあとの“動き”で完成する 知っておきたい所作の基本

仕立ての良いスーツを着ていても、立ち居振る舞いが雑だと、その良さは半分も伝わらない。逆に、ごく普通のスーツでも、所作が整っている人は、なぜか格好よく見える。スーツは、着ている間ずっと「動きながら見られる服」だ。ここでは、今日から意識できる所作の基本を整理していこう。

CHAPTER 1|ボタンは「留める」より「外す」場面で差が出る

ジャケットのボタンには、決まりがある。ただし、型によって扱いが異なる。

型立っているとき座るとき
シングル 2つボタン上のみ留める(下は常に外す)外す
シングル 3つボタン中央のみ(または上2つ)。下は留めない外す
ダブルブレスト基本は留める場の空気に合わせて判断

一番下のボタンは留めない。 これは「アンボタンマナー」と呼ばれる、スーツの最も有名な作法のひとつだ。留めてしまうと、裾が突っ張り、生地に不自然なシワが寄る。

もうひとつ大切なのが、立つときに留め、座るときに外すという動作の切り替えだ。座ってもボタンを留めたままだと、前身頃が引っ張られ、生地が傷みやすくなる。

CHAPTER 2|座る・立つ その一瞬が見られている

座るとき

  1. 座る前に、ボタンを外す
  2. 上着の裾を軽く整え、お尻の下に敷かない
  3. 背もたれには深く寄りかからず、背筋を保つ

立つとき

  1. 立ち上がる前に、姿勢を整える
  2. 立ち上がり際に、ボタンを留める
  3. 上着の裾を、軽く下に引いて整える

これを、自然な流れでこなせるかが分かれ目だ。もたついたり、ボタンを留め忘れたりすると、せっかくのスーツが台無しになる。

脚を組むときの注意もある。脚を組むと、スラックスの裾が引き上がり、素肌が見えやすい。そこで、ふくらはぎまで隠れる長さの靴下を選んでおくと、座っても見苦しくならない。

CHAPTER 3|ポケットは“飾り”と考える

スーツのシルエットを一番壊すのは、ポケットに物を入れすぎることだ。

  • ジャケット:財布、スマホ、鍵を入れると、胸や腰が膨らみ、ラインが崩れる
  • パンツ:両側に物を詰めると、脚のシルエットが台無しになる
  • 手を入れっぱなしにする:だらしない印象を与える

荷物は、バッグか、ジャケットの内ポケットにまとめたい。内ポケットなら、体のラインに沿うため、外から目立ちにくい。

CHAPTER 4|細部に宿る、着こなしの所作

袖口のシャツ
ジャケットの袖口から、シャツが1〜1.5cm覗くのが目安だ。これが、清潔感と、きちんと感を生む。

ネクタイの長さ
結んだ大剣の先端が、ベルトのバックルにかかる程度が基本。短すぎても長すぎても、バランスが崩れる。

靴下の色
スラックスか靴の色に合わせると、脚のラインが自然につながる。

靴の手入れ
足元は、驚くほど見られている。汚れた靴は、スーツ全体の印象を引き下げる。北海道では、冬場の塩の跡に特に気を付けたい。

CHAPTER 5|北海道ならではの所作 コートの脱ぎ方

雪国のスーツには、もうひとつ大事な所作がある。コートの扱いだ。

  • 訪問先では、建物に入る前に、コートを脱ぐ
  • 雪や水滴は、屋外で払い落とす
  • 脱いだコートは、汚れた面を内側にして畳み、腕に掛ける
  • 室内で、コートを着たまま挨拶しない

雪や泥の付いたコートを、そのまま相手の空間に持ち込まない。相手の場所を汚さないという、心配りが所作の根っこにある。

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CHAPTER 6|意外とやりがちな、NGな所作

  • 座ったまま、ボタンを留めっぱなしにする
  • 一番下のボタンまで留めてしまう
  • ポケットに手を入れたまま、歩いたり話したりする
  • 上着を着たまま、背もたれに寄りかかって座り、裾をお尻で潰す
  • 裾が引きずるほど長いパンツを、そのまま履く
  • 濡れたままのコートを、相手の部屋に持ち込む

どれも、知らなければ気づけないことばかりだ。逆に言えば、知っているだけで差がつく。

EDITOR’S EYE|編集後記

所作とは、堅苦しい決まりごとではなく、服への敬意だと思う。ボタンを外して座るのは、生地を傷めないため。ポケットを膨らませないのは、仕立てのラインを守るため。コートを屋外で脱ぐのは、相手の場所を大切にするため。どれも、服と、相手と、自分への気遣いから生まれた動きだ。

そして、所作は、いくら良い服を着ても、身につけるしかないものだ。最初は意識して、やがて無意識に。そうなったとき、スーツは本当に、その人のものになる。

オーダースーツ Roi Renard(ロイレナード)では、着丈や袖丈、ボタンの位置など、所作が美しく見えるための寸法についてもご相談いただけます。気になることがあれば、お気軽にお問い合わせください。

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