会食・ジンギスカン屋の流儀

会食の席は、ビジネスの場でありながら、リラックスした空気が流れる。だからこそ、気が緩んだ瞬間に、所作とスーツの扱いに素が出る。ジャケットを脱ぐタイミング、グラスの持ち方、汚れてしまったときの対処。知っているだけで、席での印象は変わる。会食の基本を、スーツの視点から整理していこう。

CHAPTER 1|席に着く前に、整えておくこと

会食の所作は、店に入る前から始まっている。

  • コートは、店の入口で雪を払い、脱いでから入る
  • 店のスタッフに預けられる場合は、汚れた面を内側にして畳み、渡す
  • ジャケットのボタンを留め、身だしなみを整える
  • スマートフォンは、マナーモードにして、鞄にしまう
  • 靴の汚れ、特に冬は塩の跡を、入る前に確認する

座敷や掘りごたつの店では、靴を脱ぐ場面が多い。靴下の穴や汚れ、靴の中のニオイも、意外と見られている。前の記事でも触れたが、足元の手入れは、冬の会食でこそ効いてくる。

CHAPTER 2|ジャケットは「着たまま」が基本

会食の席でも、ジャケットは着たままが基本だ。

  • 席に着くときは、ボタンを外して座る
  • 暑くても、自分から脱がない
  • 上位の人が「どうぞ上着をお脱ぎください」と声をかけたら、感謝して脱ぐ
  • 脱ぐときは、上位の人が脱いでからが望ましい

脱いだ上着は、椅子の背もたれに掛けるか、店のハンガーを借りる。畳んで椅子に置く、丸めて隅に置くのは避けたい。シワの原因になるうえ、見た目もだらしなくなる。

CHAPTER 3|乾杯と、お酌の所作

お酒の席では、グラスの扱いに差が出る。

乾杯のとき

  • 目上の人のグラスより、少し低く掲げる
  • グラスをぶつけない(特に、目上の人とは)
  • 目を見て、一言添える

お酌のとき

  • 注ぐときは、ラベルを上に向け、両手で持つ
  • 注がれるときは、グラスを持ち、両手で受ける
  • グラスが空にならないよう、さりげなく気を配る
  • 手酌は、避ける

袖口にも気を配りたい。注ぐ動作で、ジャケットやシャツの袖が、料理やグラスに触れやすい。袖を軽く押さえるくらいの意識があると、見た目も整う。

CHAPTER 4|料理を前にしたスーツの扱い

会食でスーツが汚れる原因は、意外と身近なところにある。

汚れの原因起きやすい場面対策
ソース、醤油、油の跳ね鍋、焼肉、揚げ物ナプキンを膝に広げる。ネクタイの先を、シャツの間に軽く挟むか、ジャケットの内側に入れる
お酒、飲み物のこぼれ乾杯、お酌グラスを、体の外側に置く。注ぐ・受けるときの、袖の位置に注意
煙、ニオイジンギスカン、焼肉、居酒屋ジャケットは、店の袋やハンガーに掛けて保管
ネクタイの汚れ麺類、汁物前屈みになりすぎない。ネクタイを、軽く押さえる

北海道で外せないのは、ジンギスカンや焼肉の煙だ。煙は、ウールに入り込み、翌日まで残る。着たまま座ると、ジャケット全体に染み付く。お店が用意する袋やカバーに入れて、席から離して保管するのが、一番確実だ。もしなくても試しに店員さんに声を掛けてみよう。ジンギスカン、焼き肉のお店では洋服やかばんを煙から守る為の袋を用意してるケースがある。

CHAPTER 5|お酒が進んだときの、スーツと所作

お酒が入ると、所作が崩れやすい。ここで気を引き締められる人は、信頼される。

してしまいがちな崩れ

  • ネクタイを、早々に緩める、外す
  • ジャケットを脱いで、床や椅子の上に放置する
  • 背もたれに深く寄りかかり、脚を組む
  • 袖をまくる、シャツの裾を出す
  • 上司より先に、席を立つ、帰る

ネクタイを緩めるタイミングは、上位の人が緩めてから、または場の空気が和らいでからが無難だ。早すぎる緩めは、ビジネスの場ではだらしない印象につながる。

CHAPTER 6|お酒をこぼした、汚してしまったときの対処

万が一、スーツが汚れても、慌てない。初期対応で、結果が大きく変わる。

飲み物をこぼした場合

  1. ナプキンやおしぼりで、上から軽く押さえ、水分を吸い取る
  2. 擦らない(広がるうえ、生地が傷む)
  3. 席を中座して、トイレなどで、固く絞った布で、軽く叩く

油や、ソースが付いた場合

  1. ナプキンで、表面の油分を、そっと取る
  2. 水で濡らしすぎない(輪染みになりやすい)
  3. 早めに、クリーニング店に相談する

擦らない。水で広げない。 この2つを守るだけで、後の処理が、ずっと楽になる。シミの原因を、クリーニング店に伝えることも、きれいに落とす近道だ。

CHAPTER 7|帰宅後の、スーツの手入れ

会食の後は、煙と、ニオイと、湿気がスーツに残っている。その夜のうちに、リセットする。

  1. ポケットの中身を、すべて出す
  2. 肩に厚みのあるハンガーに掛け、風通しのよい場所に吊るす
  3. ブラシをかけて、表面のホコリや、細かな汚れを落とす
  4. 消臭スプレーは、生地に直接かけすぎない(シミ・輪染みの原因になる)
  5. 1〜2日は、休ませる(連日着用は避ける)

ニオイが気になるときは、風通しのよい日陰に吊るすのが基本だ。ウールは、湿気とニオイを、吸っては吐く素材だ。時間をかけて、風に当てることが、いちばんの消臭になる。

EDITOR’S EYE|編集後記

会食の所作は、緊張と、気配りの、ちょうどいい塩梅で成り立っている。堅苦しすぎず、崩れすぎず。その「間」を保てる人は、周りから、一緒にいて心地よい人として記憶される。

そして、そのバランスを支えるのが、体に合ったスーツだ。座ったときに突っ張らない。腕を伸ばしてグラスを持っても、袖口が乱れない。動きに、無理のない服は、所作を自然に、美しく見せてくれる。

オーダースーツ Roi Renard(ロイレナード)では、座ったときの着心地や、腕の動きやすさなど、実際の所作を踏まえた仕立てのご相談も承っています。気になることがあれば、お気軽にお問い合わせください。

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